
発行部数 8,000部 日本語のみ
==============================================================
No.181 大胆に「攻」と「守」を使い分ける源吉兆庵の海外戦略
--------------------------------------------------------------
“選ばれ続ける仕組み”を設計するメールマガジン 2011.08.29
ブランディングニュース『世界で活躍するニッポン・ブランド』
==============================================================
こんにちは。
アイディーテンジャパン・ブランディングニュース編集局です。
暑い日がつづいていますが、みなさん体調はいかがでしょうか。
今日を数えれば、残り3日で9月。
涼しい秋を迎えるまで、もうしばらくの辛抱ですね。
そんな今日8月29日は「焼肉の日」。
しっかりスタミナをつけて、明日への活力をつけたいものです。
さて、今回のブランディングニュース
『世界で活躍するニッポン・ブランド』は、
高級和菓子処として高名な源 吉兆庵を取り上げます。
宗家 源 吉兆庵の社名で出発したのは1994年、
創業は1947年と、老舗が多い和菓子業界の中では
新しい会社と認識されることも少なくありません。
しかし、店舗は東京・銀座、大阪・北浜といずれも一等地にあり、
ほかに地名を冠した店舗も。
国内の主要百貨店や商業施設では、
ずらりと並ぶ和菓子ブランドの中に必ずといっていいほど
源吉兆庵の名前を目にします。
老舗が多い市場でのポジショニングは優位といえず、
さらに和菓子自体の市場が縮小傾向にある環境下で
確実に成長を遂げてきた源吉兆庵。
今回は、海外にも出店し成功しつづける源吉兆庵の戦略をもとに、
「日本発」の活用について考えていきたいと思います。
源 吉兆庵
http://www.kitchoan.co.jp/
* * *
--------------------------------------------------------------
<本日の内容>
--------------------------------------------------------------
[1] "選ばれ続ける仕組み"の事例:
大胆に「攻」と「守」を使い分ける源吉兆庵の海外戦略
[2] 編集後記
--------------------------------------------------------------
[1] "選ばれ続ける仕組み"の事例:
大胆に「攻」と「守」を使い分ける源吉兆庵の海外戦略
--------------------------------------------------------------
■ 歴史や伝統の先にある“地域イメージ”を要素に取り入れる
冒頭にも触れたように、何百年も前に創業した老舗だけでも
全国には数え切れないほど存在するのが、和菓子の業界。
そうした環境下で源吉兆庵が勝つためには、
いわゆる“ものづくり”にこだわるだけでは困難といえます。
新しい商品の開発、あるいは洋菓子など異分野への挑戦も
視野に入れ考えなければならない。
しかし、現社長が選んだのは「和菓子で攻めていく」ものでした。
歴史や文化を由来とする和菓子も多い中、
老舗とどう戦っていくのか。
贈答品に注力する、いわゆる大手の路線で勝負するのか。
こうした中、源吉兆庵は「地域名を店名に冠する」という
アイデアとめぐり逢うことに。
成功のカギ、すなわち売れ筋は、その店や商品の歴史ではなく、
“地域イメージ”と結びついているということに気付いたのです。
こうして源吉兆庵では、直営3店以外に
「京都 菓匠清閑院」「奈良 香寿軒」「御菓子処 日本橋屋」など
地域に根差した店をつくりました。
地域の名を冠し、土地の文化や風土をイメージした商品をつくる。
現在は、それぞれのブランドも知られるようになり
他の地域へ進出を遂げる例も出てきました。
こうした源吉兆庵の大胆な行動と戦略は、
海外出店においても、十二分に発揮することになります。
■ 現地ニーズや文化の融合に挑む
源吉兆庵は現在、7カ国11都市に店を構えています。
海外で「日本発」「和菓子」という点は、他が真似できない特権。
しかし、消費者には文化が定着しておらず、
購入に結びつくイメージは存在している訳がありません。
そんな中、源吉兆庵は
日本というイメージと現地のニーズをマッチさせました。
初出店したシンガポールでは、高島屋内のフードコートで
大判焼(今川焼)を販売。
和菓子とは趣が少し異なり、日本の源吉兆庵では
取り扱っていない商品です。
しかし、これが1日で販売2500個を記録するヒットとなるのです。
もちろん、この成功が足がかりとなり、現在の出店につながります。
もう1点、着目したいのが「日式月餅」の成功。
中国では、中秋の名月が見られる旧暦の8月15日に、
月を愛でながら食べる習慣のある「月餅」。
中国国内においては、贈答や自宅用として
この時期に購入機会が増えることもあり、一つの商戦を迎えます。
源吉兆庵では、日本の文化との融合をテーマに、
この商機を逃すことなく新商品を投入。
そもそも月餅は、平たい丸形と中に餡などを詰める点を除き
地方ごとに大きさや内容が異なっていたこともあり、
源吉兆庵でも形はそのままに、中の餡に日本の食文化を融合。
当初は抹茶風味の餡と日本風のパッケージで挑戦し、見事にヒット
さらに翌年は違った内容で勝負し、これもヒットを収めました。
“日本文化の発信”と“現地文化の窓口”という機能を
現在いずれの店舗でも意識し、そのコンセプトを大切にしています。
■ 日本発を武器とする「攻め」と大切にしたい「守り」の判断
ニッポンの企業が、ニッポンの文化を背負ってものを売る。
海外進出する企業にとって、「日本」というブランドは
他のブランドと競争する際の武器であり、
自分たちのブランドを守るものです。
しかし、ただ自社の商品をニッポン・ブランドとして
販売するだけでは、一時的にヒットしたとしても長続きしません。
そこで重要なことは、
いかに「攻め」、いかに「守る」かということ。
高級和菓子のメーカーが決して作ることのない「大判焼」の販売、
中国の文化を利用した「日式月餅」の商品開発は、
市場、そしてこれまでの自社の姿勢からの「攻め」ともいえます。
その上で、海外の各店舗では、
日本の風習や季節ごとに行われる伝統文化をディスプレーで演出。
消費者には「伝統ある日本の菓子店」と認識を持たせることで
日本というイメージから店と商品を連想できるよう
自社の商品とともに、日本の文化を「守って」きました。
その上で、より多くの消費者が日本を理解しやすく、
また馴染み深いものにしてもらえる日式月餅のような商品は
日本文化を大切に考えるからこそ、できる行動ではないでしょうか。
日本では、また自社では
「これをやって当たり前」、「こんな事はやらないのが常識」
という感覚や概念。
取り巻く環境すべてが日本と異なる海外だからこそ、
こうした“常識論”“一般論”は一旦廃し、
消費者にどう感動を伝えていくかを考える。
緻密に調査し、考え上げた「攻」と「守」の行動こそが、
そのブランドを発展させることにつながっていくのです。
=======<< 今日のブランディングの秘密 >>======================
取り巻く環境すべてが日本と異なる海外だからこそ、
こうした“常識論”“一般論”は一旦廃し、
消費者にどう感動を伝えていくかを考える。
緻密に調査し、考え上げた「攻」と「守」の行動こそが、
そのブランドを発展させることにつながっていくのです。
=============================================================
* * *
--------------------------------------------------------------
[2] 編集後記
--------------------------------------------------------------
みなさん、こんにちは。
今回は和菓子の話題を取り上げましたが、
お供として欠かせない緑茶の市場では、ブランド茶の一部産地が
大変厳しい状況下にあります。
それは、3・11に端を発した原発からのセシウム汚染による出荷停止。
生産量、知名度とも上位にある産地のいくつかが、
検査の結果、出荷停止に陥る状況となりました。
そうした産地の一つ、神奈川・足柄茶は、
検査の結果、安全性が確証された秦野、開成産の茶葉に
味が近い鹿児島県産の茶葉を加えた商品を販売することに。
安全は何よりも大切ですが、
あわせて「渋みが少ない」のが特徴の足柄茶の味が
変わることなく未来へと受け継がれることを願ってやみません。
(小田)
* * *